先日、帰化したフィリピン人の方を診察していたら母国の親が60代で亡くなったと悲しんでおられました。日本は平均寿命が長くうらやましいと言っておられました。
調べてみるとフィリピン人の平均寿命が70.4歳に対して日本人は84.3歳でした。(2019年のデータ)
日本は世界の中でも最長寿国です。フィリピンは世界順位では平均以下です。
フィリピン周辺国ではベトナム73.7歳、マレーシア74.7歳、タイ77.7歳、インドネシア71.3歳です。アフリカ諸国の多くは60歳代です。紛争地域のそれは60歳をきる国々も多くみられるのが世界の現状です。
なぜフィリピンでは平均寿命が短いのでしょうか?一番の原因は新生児死亡率が高いことがあげられます。フィリピンは日本に比べて国民全体の平均年齢が若く、新生児比率が高くなります。そのため新生児死亡率が少しでも高くなると大きく平均寿命に影響を及ぼします。
そのほか生活環境や医療事情が問題になります。生活習慣病になっても早期に十分な医療が受けられないと助かる命も助けられなくなります。フィリピンは医療環境を整えることにより平均寿命を長くする伸びしろは十分といえます。
日本は長寿社会を謳歌していますが、ただ物理的に長生きをしても仕方がないといわれています。
いわゆる健康寿命が長くないと幸せとは言えません。人生100年時代は日本をはじめ欧米先進国では目の前の現実として感じられます。
日本はフィリピンの人が羨む長寿社会ですが、それは必ずしもいいことばかりではない現実があります。これからは本当に意義のある健康長寿を目指したいものです。
著者 院長・医学博士 先田功
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