11月23日から24日に大阪で第28回日本乳癌検診学会学術総会が行われました。相変わらず多くの参加者で盛況でした。会長は“ふるかわクリニック”の古川順康先生でした。大学同門の先輩で、しかも一介のクリニックの院長がこのような大きな学会を主宰されたことをとても誇らしく思いました。テーマは“みなおそうすすめよう乳がん検診”でした。高濃度乳房や職域検診、視触診廃止やがん教育など多岐にわたる内容で議論が進められました。
高濃度乳房は最近マスコミなどでも大きく取り上げられ関心の高いテーマです。学会としてはまずその言葉の定義をはっきりさせて現場での共通認識を持つ重要性が訴えられました。そのうえで本当に高濃度乳房は検診に不利なのかということが様々なデータで検証されました。さらに高濃度乳房に対する検診の在り方およびその先の方策について議論されました。確定的な正解は得られないものの方向性については道筋が示されました。w
もう一つ乳がん検診の現場での大きな変化は視触診の廃止の動きです。医師の手配がつかない郡部などで視触診廃止が進められています。宮城県や高知県の実情が紹介されました。仙台市や高知市など都市部では視触診は継続され、郡部では省略されました。がん発見率などの数字では統計的に優位な差はないものの、視触診のみで見つかるがんは明らかにあります。それを視触診廃止にしたときにどうすくい上げるかが今後の課題と言えるでしょう。
乳がんの早期発見、早期治療のために検診は必須ですが、自己検診も非常に重要です。乳がんに関しては自分で見つけることのできるがんであることを理解して、自分の乳房に関心を持つということが大事です。成人女性に対する啓発活動はもちろんですが、子供のころからのがん教育が大事です。がん教育を積極的に推し進めている自治体の報告がされました。
乳がん死亡を減らすために検診の重要性を改めて確認しました。そのためにあらゆる方策を講じることが解決への道筋になると信じてやみません。
著者 院長・医学博士 先田功
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