映画”ロングロングバケーション“を観てきました。メジャーな映画ではありませんがユーモアとペーソスにあふれる名作でした。アメリカ映画ですがテーマは現代日本と共通していてなかなか考えさせられます。
ストーリーはアルツハイマーの元文学教師である夫と癌末期の妻が古いキャンピングカーに乗り込んで自宅のボストンからフロリダのキーウェスト(夫の専門であるヘミングウェイの生家)を目指すというロードムービーです。
老夫婦には2人の子供がいます。姉は結婚して2人の子供に恵まれ、自身は成績優秀で父の影響を受けて今は大学の文学教授をしています。弟はいまだ結婚もしないで姉に対して劣等感を持っています。それでも両親を心配して、母親を病院に入院させ、父親は施設に入れようとしています。それを知った母親が認知症の夫とともにキャンピングカーで逃避行をします。それがロングロングバケーションです。
アメリカ東部の美しい自然と昔懐かしいアメリカンポップスを背景に物語は進みます。
記憶が失われ、時には妻さえ分からなくなる夫と麻薬をのみながら痛みをこらえる妻との間に交わされる会話がユーモアに富み、長い夫婦生活の年輪を感じさせ重いテーマでありながらも話は軽妙に展開します。
お漏らしをして妻に叱られながらふと自分を取り戻す夫は、自分のふがいなさに情けなくなります。これ以上病気が悪化するようならライフル自殺を助けてくれるように妻に懇願します。妻は自分の最期は病院にチューブにつながれた状態ではなく、人間らしく尊厳をもって迎えたいと思っています。
これはアメリカの特殊な人々の話ではなく日本でも世界中どこにでも起こりうる状況であると言えます。
観るものにいつ自分の身に起こってもおかしくないと思わせます。
エンディングについては意見の分かれるところです。
監督および主演俳優はこのエンディングに賛成だと語っていました。私はハッピーエンドであると思いました。自分の終活につき大いに考えさせられます。
皆さんも是非この作品を観ることをお勧めします。映画を観られない場合は原作”旅の終わりに“を読むのもいいかもしれません。
自分および身近な人の最期をどのように迎えるのか日頃から考え話し合っておくことが大事だと思いました。
著者 院長・医学博士 先田功
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