分子生物学の進歩により、がんの発生メカニズムが次々明らかとなってきました。そこをピンポイントに狙い撃つのが分子標的薬です。現在各種のがんに対して新たな分子標的薬が次々に開発されています。それを臨床で使えるようにするためには、臨床試験が必須です。そこで現在、様々な臨床試験が花盛り状態です。
全乳がんの6-7割はホルモン受容体を有し、女性ホルモンを介して成長することが以前から知られていました。
そこでそのホルモンと受容体の結合を阻止する薬が開発され実臨床で使われてきました。したがってホルモン受容体陽性の乳がんはもともとおとなしい性格であることも相まってホルモン剤を使うことにより治療成績は良好でした。
それでもホルモン受容体陽性乳がんが100%治るというわけではありませんでした。そうした乳がんの再発メカニズムが解明されてきました。
ホルモン受容体陽性の再発乳がんとはホルモンと受容体の結合が妨げられても別の経路でまた分裂できるようになったものです。その別経路にはいくつかの道筋がありますが、そこをブロックできれば理論的にはその再発乳がんを治療することができます。
これがプレシジョンメシシン(個別化医療)の考え方です。
これからは個々のがん細胞の遺伝子変異を測定し、その特徴にあった薬が選択される時代となります。
実は臨床の世界では予想通りの結果が出なかったものもいくつか見られます。
途中経過で有効と判断されても、最終的に臨床で役立つかどうかを判断するには膨大な時間を要します。
とにかくがん治療は今新たな段階を迎えています。手間と暇とお金はかかりますが地道に努力を重ね成果を上げたいものです。乳がんをはじめがんが撲滅される日を目指して。
著者 院長・医学博士 先田功
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