先日、産業医講習会に行ってきました。
産業医とは企業等において労働者の健康管理等を行う医師です。日本においては、法律により一定規模以上の事業所には産業医の選任が義務付けられています。私も資格を取って、現在西宮市の某酒造メーカーの産業医をしています。産業医資格は取得後も一定期間内に講習や実習を受けて更新をする必要があります。その一環で講習会を受けてきました。日曜日の一日を使っての講習で、とても疲れますがこの分野も進歩が著しく大変勉強になりました。
現在の産業衛生の2大目標はメタボ対策とストレスコントロールです。現代の人類は歴史が始まって以来初めて餓死よりも過食死が多くなっています。過食死とは過食が原因でメタボリックシンドロームや糖尿病を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中で命を落とすことを指します。最近の研究では、過食は癌や認知症も助長することが明らかとなっています。したがってマクドナルドやコカ・コーラは人類にとってIS(イスラミック、ステート)やアルカイダよりもはるかに大きな脅威であるといえます。日本では国を挙げてメタボ対策に取り組んでいます。特定健康診査がそれで、企業では従業員に検査を受けさせることが義務付けられています。その結果をもとに産業医が保健指導をしたり、適切に医療機関を受診するように指示をしたりします。
一方昨年から全企業を対象にストレスチェックテストが実施されました。日本では自殺死亡者が年間3万人近くに上ります。これは先進国の中でも人口比率に直して最も多い部類になります。多くは中高年で過労や職場事情が原因の大半を占めています。テストによってストレスの度合いを正しく判断して適切な対応を取ることが望まれています。精神的に快適に仕事をすることは労働生産性を高めるだけでなく、命、体を大事にするという意味でも大変重要な問題です。
産業衛生は職場にとどまることなく、家庭でも社会でも同じように実践されることが必要です。国民が肉体的にも精神的にも健康で生きることができることが何より大切です。皆さんも是非メタボ対策とストレスコントロールを行ってください。
著者 院長・医学博士 先田功
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