第24回日本乳癌学会学術総会が東京ビッグサイトで開催されました。総参加者数は6600名と大変な盛会でした。ただ東京ビッグサイトは広大な敷地にあり、人口密度はそれほどではなかった印象でした。それでも熱気はいつも以上に感じる有意義な学会だったと思います。
プレジデンシャルシンポジウムではこのテーマで外科治療、放射線治療、薬物療法および診断法の立場から発表が行われました。外科治療はもともと個別化治療と言えます。
その中でも手術法の進歩は著しく、最近は乳房再建が新たな選択肢として注目されていて標準治療をもとに患者さんの選択肢の幅が広がりました。
放射線治療はあまり注目されていませんが進歩は著しく、長期観察による治療の有効性が次々と明らかとなってきました。
特に照射技術の進歩はより効率的、集中的照射を可能にして副作用を抑えて治療効果をあげています。
薬物療法は最も注目される分野で世界中の臨床試験でエビデンスが蓄積されて治療に応用されています。
しかし新たな治療薬は非常に高価となり、治療効果はもちろん経済的側面も考慮に入れながら選択していかなければならなくなってきました。
最後に診断法の進歩なくして個別化医療の実現なしということで、真に乳がん患者個々の分子生物学的特徴をとらえて、効果的で無駄のない治療を選択しなければならない時代となりました。
さらに以前は再発したら治癒は望めないと言われましたが、適切な診断と治療により治癒も可能な時代が来る可能性が示唆されました。
次に私が注目したのは“命にかかわらない乳癌をいかに見極められるか”というテーマです。
昨今過剰診断ということが言われ始めました。つまり明らかに見つけなくてもいい乳がんがあることは間違いないというのが専門家のコンセンサスです。しかしそれを見極める方法が今のところありません。
現状としていかに対処すべきか多面的に問題が論じられました。
この点につきさらに詳しく次回に解説します。
もう一つの大きなテーマとして日本の乳癌シーンを変革する地域医療についても次回に報告を譲ります。
著者 院長・医学博士 先田功
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