兵庫県は平成22年より県地域医療再生計画事業の一環として阪神医療福祉情報ネットワーク“h-Anshin(はんしん)むこねっと”を構築し、病診医療IT化を進め平成26年より実際の運用を開始しました。これにより兵庫県南部7市1町(西宮市、尼崎市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市,三田市および猪名川町:人口約170万人)約1500の医療機関がネットワークシステムで結ばれ、画像、検査結果などの共有と検査、診察予約の簡素化を可能にしました。現在12病院870医療機関が登録されています。
具体的には患者さんが診療所から病院に紹介された場合、診察や検査の予約がネット上で可能になります。さらに病院での診察や検査の結果を診療所で確認できます。入院や手術が必要となった時も患者さんの情報は病院と診療所で共有されます。したがって治療が完了して再び診療所に戻ってくる時も切れ目のない診療が可能となります。実際はまだまだ共有できる情報に限りがあり連携医療機関も十分拡がっているわけではありませが、これが実現できれば基幹病院、中核病院と診療所が一体化されることとなります。最終目標はこれが全国の医療機関で構築されることです。
当院は乳がん診療を専門としています。乳がんの診断がついた患者さんを病院に紹介します。病院では精密検査ののち、入院手術を施行し、術後の抗がん治療や放射線療法を行います。その後、状態が落ち着いたら再び当院でフォローアップをします。その間、クリニックと病院の間で紹介状や画像データなどをやりとりする必要があります。そうした情報がネットワークで結ばれていると簡単に正確に伝わります。医療の効率、安全性が大いに増すものと期待されます。
将来的に、国はマイナンバーなどを活用し国民一人一人の医療情報が集約されることを目指しています。それが実現すれば医師は初めての患者を目の前にしても、その人の医療情報がすべて確認できることとなります。それにより無駄のない、より効率的な医療が実現できるでしょう。特に救急現場では大いに威力を発揮するものと考えられます。
医療自体の進歩もさることながら、こうした周辺環境が整えられることによっても医療は大いに進歩するものと考えられます。昨今IT技術の進歩は著しいものがあります。その恩恵が医療の世界にもおよび乳がん診療がさらに発展することを願ってやみません。
著者 院長・医学博士 先田功
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