超音波乳がん検診の可能性-院長のひとりごと

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超音波乳がん検診の可能性

 日本超音波医学会と日本乳腺甲状腺超音波医学会共催のシンポジウムにおいてJ-START(厚生労働科学研究委託費(革新的がん医療実用化研究事業)乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究)の中間報告が初めて公表されました。これは世界初、日本発の超音波乳がん検診の有効性を調べる大規模臨床試験です。参加延べ人数は72712人です。くじ引きで従来通りのマンモグラフィ検診を受ける群とマンモグラフィに超音波検査を加えた検診を受ける群に振り分けられます。両者を10年以上フォローアップして最終的には超音波検診が死亡率低下に寄与するかどうかが調べられます。今回は開始から8年がたち、中間報告として今までのデータが公開されました。

 

 超音波乳がん検診の可能性予想通りマンモグラフィに超音波検査を加えることにより発見乳がんは飛躍的に増えました。マンモグラフィのみで発見された乳がんはマンモグラフィのみ群で109人に対して超音波検査追加群で117人と差はありませんでしたが、超音波検査でのみ発見された乳がんが81人あり、超音波検査追加群での発見乳がんは合計184人となりました。マンモグラフィのみ群では視触診発見乳がんが8人あり合計117人でした。超音波検査追加群では視触診発見乳がんは0で、超音波検査を追加することにより視触診を省略できる可能性も示唆されました。超音波発見乳がんは非浸潤癌やステージI期の乳がんが多く、将来の予後改善に寄与する可能性が高いものと思われます。今後さらにデータを集積し、世界に向けた発信がなされていきます。

 

 シンポジウムではそのほかに、今後超音波乳がん検診を広めるにあたっての課題について議論されました。まず超音波検診により発見される乳がんの特徴が調べられました。

J-STARTの結果でも示されたように、非常に早期の乳がんが発見されています。それにより早く治療には入れる点で評価されますが、本当にそれが予後改善に寄与するかどうかは長期データを詳細に検討する必要があると指摘されました。さらに世界に先駆けて超音波乳がん検診を広めるためには、検診の標準化と新たに総合判定基準を策定する必要があると論じられました。そしてそうしたことの精度を十分管理することが重要であることが強調されました。

 

 これからされにデータを蓄積していく必要はありますが、日本が世界を一歩リードしていることは間違いありません。結果はどうあれ、この臨床試験が乳がん診療の進歩に寄与することは間違いないでしょう。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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