医学博士ができるまで

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医学博士ができるまで

院長のひとりごと 2014年6月号 医学博士ができるまで医学博士は足の裏についたご飯粒にたとえられます。“とらなくてもいいが、とったほうが気持ちいい。とっても食えない。”言いえて妙です。“末は博士か大臣か”という言葉があります。大臣になるのはなかなか大変ですが、医学博士はそれほど大変ではありません。実際私の外科の同期は全員医学博士です。医学部の同級生もほとんど医学博士です。世間では医学博士をとてもありがたがります。私の母もいかがわしい医学知識をひけらかすことがあります。そんなものは信用できないと言うと、“医学博士がテレビで言っていた”と反論します。目の前のあなたの息子も医学博士ですよという言葉を思わず飲み込んでしまいます。

 

 私の場合でいうと、医学部を卒業してすぐに外科医局に入局しました。1年間大学病院で下働きをして、その後3年間市民病院で外科医としての基礎修練を受けました。終了後試験を受けて外科認定医となりました。この段階で大学に戻り研究生活に入ります。同期生は皆、各研究室に割り振られて実験生活を開始します。その成果を学会で発表し、論文にして最終的に博士論文としてまとめ、試験を受けてめでたく医学博士となります。 ここまでに大体4年間かかります。私の場合はそれからさらに2年間アメリカ留学をしました。外科の同期の過半数は海外留学を経験しています。こういった医学博士の制度は医局支配の象徴と言われています。つまり医局は医学博士というアメを差し出して人事を掌握するわけです。最近はこの制度に反発して、医局に属さず博士を目指さずひたすら臨床医として修練を積む若い医師も多いと聞きます。どちらがいいのか私にはわかりませんが、時代の大きな流れであることに違いはないと思われます。

 

 というわけで私も医学研究者の端くれとして今回のSTAP細胞騒動を興味深く見ていました。まずは科学雑誌ネイチャーに論文が載ったくらいでこれほどの大ニュースになったことに違和感を覚えました。それに引き続く騒動も科学の世界ではままあることかなというのが実感です。もちろん不正行為は厳しく糾弾はされますが、別に社会問題にはなりません。最初に騒がれすぎたがゆえに、後の問題も大きくなってしまいました。その余波は周りの科学者にまでおよび、ノーベル賞受賞者の山中教授まで釈明会見をしなければならなくなりました。STAP細胞があるにせよ、ないにせよできるだけ早く騒動に幕引きをしてほしいと願ってやみません。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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