分子標的薬-院長のひとりごと

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分子標的薬

 分子生物学の進歩により新たな抗がん剤がどんどん開発されています。それが分子標的薬です。その第一の特徴は副作用が軽いことです。従来の抗がん剤はがん細胞を殺すと同時に正常分子標的薬細胞も傷害するのに対して分子標的薬はがん細胞をピンポイントでやっつけることができるからです。従来の抗がん剤が絨毯爆撃なら、分子標的薬は目標を狙い撃ちするミサイル攻撃に例えられます。第二の特徴は新薬開発が人工的に可能であるということです。今や医学の進歩によりがん細胞の増殖するメカニズムが分子レベルで解明されつつあります。したがってその経路を断ち切る物質を作ればがんの進展を抑えることができるのです。そのため新薬の開発の可能性が飛躍的に高くなります。

 

 現在乳がん治療薬として使われている分子標的薬としてはハーセプチンタイケルブそしてアバスチンがあります。ハーセプチンとタイケルブはともにハーツータンパクの働きを阻害する薬です。乳がん患者さんの2~3割でがん細胞表面にハーツータンパクを持っています。これがあるとがん細胞の増殖が盛んになることがわかりました。そこでこのタンパクを阻害する抗体を人工的に作ったものがハーセプチンとタイケルブです。働きは同じでも作用機序が違うため、一方で効かなくなっても他方でまた効くという現象が起こります。アバスチンは分裂が盛んながん細胞の周りに作られる血管の新生を抑える薬です。つまり栄養を必要とするがん細胞に、その輸送路を断つというがんの兵糧攻めをする薬です。いずれも薬ですから特有の副作用はあるものの、従来の抗がん剤に共通する吐き気や全身倦怠、脱毛などの副作用はありません。

 

 乳がんだけでなく様々ながんに対して分子標的薬が作られています。ある種の白血病や腎がんなどでは、それによって治癒が可能な特効薬ともいうべき薬も登場しています。従来の抗がん剤では効果がなかったようながんにも有効なものも開発されつつあります。またがんだけでなく、様々な病気の原因が分子レベルで解明されることによりそうした問題を解決する分子標的薬も開発されています。ただ分子標的薬には既知の副作用とは違う形でいろいろな障害が出てくる場合があります。効果ばかりでなく、特有の副作用に着目して新規に使用する場合は万全の注意が必要です。

分子標的薬

 今後、がん増殖のメカニズムがさらに詳細に判明しがん患者一人一人における遺伝子レベルの違いが明らかとなれば、それぞれに違ったアプローチの治療薬が選択できます。つまりがん治療のオーダーメード化がさらに進むことになるでしょう。患者さんそれぞれに最適の治療選択ができる日も近いでしょう。

著者 院長・医学博士 先田功

 

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