福島原発事故以来、放射線被曝に対する関心が高まっています。マンモグラフィは乳房に放射線を照射して、病変の有無を調べる検査です。当然、放射線の被曝を受けます。但しその量は100マイクロシーベルト前後です。
医療放射線については、常にそのメリットとデメリットを考慮しなければなりません。放射線を浴びるということはデメリットですが、それによって早期の病変を見つけることができるということがメリットになります。
マンモグラフィ検診は症状のない方を対象としているため、大部分の人は異常が見つかりません。ごく一部の人から早期の病変が見つかり、早期に治療することができれば、そのメリットは非常に大きなものがあります。
検診受診者全体から見たときに、そのメリットがデメリットを大きく上回ると考えられるためわれわれはマンモグラフィ検診を推進しています。 乳がんの早期発見早期治療のメリットはいまさら強調するまでもないと思います。では健康な人が100マイクロシーベルトの放射線を受けるデメリットはどれほどのものでしょうか? 私たちは何もしなくても、自然界から放射線を浴びています。その量は年間2ミリシーベルト(2000マイクロシーベルト)前後といわれています。 1000マイクロシーベルトが1ミリシーベルトですから、マンモグラフィで受ける100マイクロシーベルトがそれほど大きな値でないことがご理解いただけると思います。さらにわれわれが、放射線被曝を心配する検診受診者の方にお示しする例として日本からアメリカやヨーロッパへ飛行機で行くと大体同じ量の被曝をしますと説明します。 どうか今後も安心してマンモグラフィ検診を受診してください。
ところで原発事故による被曝と、医療放射線の被曝では決定的な違いがあります。それは医療における放射線は完全にコントロールされているということです。医療放射線は原子力発電とは違い、操作を誤って爆発的事象が起こるようなことはありません。 CT検査ではミリシーベルト単位の被曝がありますが、この量では直接体に傷害を起こすようなことはありません。手術ができない体の深部や脳のがんに対して用いる治療放射線の場合、その放射線量は診断用放射線の数千倍から数万倍になり操作を誤ると人体に傷害をきたします。しかしこれは手術や薬物療法と同様で、医療行為は常に危険とは裏腹のところで行われています。
われわれ医療者はリスクを最小にして、効果を最大にするよう努力をしています。放射線治療はそのようなリスクもあることを充分説明して、納得の上で行われます。 この機会に皆さんも医療放射線について、今一度考えていただけると幸いです。
著者 院長・医学博士 先田功
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