先日、横浜で日本乳癌検診学会が行われました。私も参加してきました。そのためにクリニックを2日間臨時休診とし、大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。ただ、普段から勉強をしているつもりでもこうした機会にいろいろまた新しい知見に触れることができます。専門医として、こういう研鑽はぜひとも必要と考えています。
今回の学会の特徴は、“がん対策基本法”と“乳がん超音波検診”の2点でしょう。
国は“がん対策基本法”によって5年以内にがん検診受診率を50%以上にする努力目標を設けました。乳がん検診もそのひとつですが、現在の受診率はわずか10%程度です。
その数字を上げるための、各方面の取り組みが様々取り上げられました。
さらにただ受診率を上げるだけでは、最終目標である乳がん死亡率の減少には結びつかず、その精度を良好に保つ必要がある点が強調されました。
2点目の超音波乳がん検診については、その導入が本当に乳がん死亡低下に役立つのかどうかを検討するために、世界で初めてわが国で臨床試験が行われることとなりました。
マンモグラフィ検診が有効であることは、欧米の臨床試験ですでに実証済みです。
欧米各国はその結果を元に、国策として乳がん検診に取り組み死亡率の減少を実現しています。日本では検診受診率の低さはもちろん、欧米に比べて若年の乳がんが多く、いまだ乳がん死亡が増加しています。
若年乳がんの検出には超音波が優れているといわれており、この臨床試験は世界でも注目を集めるものと思われます。
学会こぼれ話:上に述べたようなお堅い話は、もちろん非常に重要なのですがなかなか世間の耳目を引かず結局国民のコンセンサスを得るのは難しいのが現状です。
そんなことよりも乳がんを取り上げた映画やテレビ、さらに乳がんにかかった芸能人の発言のほうがはるかに影響力を持ちます。
学会としても、あまり近視眼的になりすぎて世間と乖離するのでなく、発想を転換してもっと受診者の目線に立った取り組みも必要ではないかという提言があり注目されました。
乳がん検診に情熱を燃やして、何千人の人が年に一度会して行われるこの学会。
その成果は十分とはいえないものの、着実に一歩一歩進めていくことが大事
と再認識しました。
著者 院長・医学博士 先田功
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