最近、乳がん検診の世界で“高濃度乳房(乳腺)”が話題になっています。女性の乳房は乳腺と脂肪からなっています。マンモグラフィを撮った時に乳腺は白く、脂肪は黒く映ります。この白い割合が多い乳房を高濃度乳房と呼びます。
専門的には乳房の構成を(極めて高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性)の4段階で表現します。
乳腺専門医がマンモグラフィを読影する際には必ず乳房の構成も見ています。このうち極めて高濃度と不均一高濃度が高濃度乳房ということになります。
日本人では不均一高濃度の割合が多く全体の半分前後となります。
マンモグラフィ上、異常なしこりや石灰化はレントゲンでは白くなります。したがって高濃度乳房では異常が見つかりにくくなる場合があります。これを我々乳腺専門医の間では、雪原に白うさぎを探すようなものと例えます。
もちろん高濃度でもほとんどの場合は異常を指摘することは可能です。
ただ脂肪性の乳房に比べると若干見落とし率が高くなるのは事実です。
それで検診の時に高濃度乳房の受診者にはそれを伝えるべきではないかという考え方があります。
アメリカでは多くの州で高濃度乳房の受診者にはその旨を伝えています。
ただその時に高濃度乳房と伝えられた人はどうすればいいのでしょうか?その後の体制がまだ整っていないということで日本では学会(日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本乳がん検診精度管理中央機構)が緊急提言を発表し、現時点で一律に乳房濃度を通知することは時期尚早であるとしました。しかし乳房の構成は受診者個人の情報であり、受診者の知る権利は尊重されるべきです。
乳がん検診の限界や高濃度乳房であることの意味、自覚症状が生じた場合の対応などの情報提供に関する体制整備が今後の課題です。
高濃度乳房の場合はマンモグラフィで異常なしであっても油断はできません。それを補う手段として超音波検査があります。
現在超音波検査を併用する乳がん検診の研究が進行中です。
自分の乳腺の状態を知ることは大事です。
関心があれば自分の乳腺濃度を問い合わせてみてください。
著者 院長・医学博士 先田功
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