オンコプラスティックサージャリー-院長のひとりごと

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オンコプラスティックサージャリー

 乳房オンコプラスティックサージャリー(腫瘍形成外科)とは乳がん手術において様々な形成外科的手法を用いて、相反する概念である根治性と整容性を両立させようとすることです。

 

 乳がん手術は長い間、乳房切除術が唯一の標準術式でした。それに対して1980年代より乳房温存手術が取り入れられるようになりました。乳がんの根治性を損なわず、整容性も良いということで温存率は上昇の一途でした。しかしここへきて温存率は頭打ちになっています。一つにはすべての乳がんが温存術の対象とならないことと、もう一つの理由としては無理に温存をしてもかえって整容性が保たれないことがわかってきたことがあります。そこで形成外科的手技を用いて根治性と整容性を両立させようとする試みが広まってきています。

 

 乳がんの手術ではどうしても病巣を含む乳腺、脂肪組織を切除する必要があります。温存術といっても乳房のボリュームは縮小し、形状のひきつれは否めません。そこで形成外科の手法でひきつれを治したり、時には健側の乳房にメスを入れて左右差をなくしたりする術式がとられることもあります。

 またどうしても温存にこだわることなく、全摘をして新たに乳房形成をするという術式も広まっています。国も乳がん術後再建の重要性を認め、従来は自家移植による再建のみが保険適応でしたが、最近人工物による再建にも適応が認められるようになりました。乳房再建術の重要性は患者さんにも形成外科医にも認知されるようになってきました。

 

 従来自家移植は広背筋か腹直筋に脂肪をつけて再建する方法しかありませんでした。これでは筋肉がとられることによる不都合が生じました。そこで腹部の脂肪組織だけを乳房に移植し、顕微鏡手術によって栄養血管を吻合する新しい術式が開発されました。また人工物再建ではシリコンインプラントの進歩があり耐久性が増し、より自然に近い感触の乳房が作られるようになりました。

 

 乳がん治療において手術は必須のものです。手術によって病気は克服できても乳房喪失による精神的ダメージには計り知れないものがあります。いまや医療者はその点にも考慮をしながら治療にあたっています。今後もオンコプラスティックサージャリーが増々進歩することを願ってやみません。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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