先日、当院の看護師2人が緩和ケア講習会に参加してきました。昨年は私が参加しました。かつてはがん終末期医療といわれ、がんが転移再発して手の施しようがなくなった患者の治療をさしていました。今ではがん患者に対して、早期からの介入が必要と考えられています。少なくとも転移再発が明らかとなれば、その段階から肉体的、精神的ケアが必要となります。もっと早期から、つまりがんと宣告されたところから治療が始まるという考え方もあります。
具体的にはがんに伴う痛みの治療が中心になります。昔はがん患者の最期は、痛みに苦しみながら迎えることが多くありました。現在は麻薬性鎮痛薬を中心に、痛みのコントロール法は非常に進歩しています。完全に痛みを除くことはできなくても、大抵は十分に日常生活が送れる位には制御できるようになっています。その他のがんに伴う肉体的、精神的苦痛に対する対処法もずいぶん進歩しています。私自身病院勤務時代に試行錯誤しながら対応してきたような事例でも、今はとてもシステマティックに対応できる現実を目の当たりにして非常に驚きました。
講習会は講師が講義をするといった形式のものは少なく、ロールプレイ実習やグループ討議が多く組み込まれより実践的なものでした。参加者も医師だけでなく、看護師や薬剤師などのコメディカルが入っています。ロールプレイは様々なケースを設定して、医師役、患者役、家族役と役割分担をして参加者が演技をします。普段の自分と違う立場で考え、発言することで全く異なる発想が生まれるということを実体験できます。グループ討議では、やはり問題を抱えた模擬患者に対して多職種の医療者が話し合うことで普段あまり考えないようなことをそれぞれが思っていることが確認できます。
国はがん対策基本法の中で、がんの予防、治療と共にこの緩和ケアもひとつの大きな柱と位置づけています。最新の医療知識に基づいた緩和ケアが全国にいきわたり、がん患者が安らかな最期を迎えられることを願って止みません。当院も乳腺を専門とするクリニックとして、その一翼が担えるよう努力していきたいと思います。
著者 院長・医学博士 先田功
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