第19回日本乳癌学会-院長のひとりごとコラム

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第19回日本乳癌学会

 第19回日本乳癌学会

 今年は9月2日から4日まで、仙台で日本乳癌学会がありました。当初は7月初めの予定でした。ところが3月11日に東日本大震災が起こり、開催が危ぶまれました。4月に東京で開催予定の日本医学会総会と日本外科学会は中止になりました。乳癌学会も中止が考慮されましたが、関係各位の努力により9月に延期しての開催が実現しました。仙台でこれほど大きなイベントが行われるのは震災以降では初とのことでした。飛行機で仙台空港に降り立つときには、海岸線の防風林は津波のためになぎ倒され、枯れて無残な姿をさらしていました。空港はかなり復旧したものの、上層階はまだ閉鎖の状態でした。空港周辺のレストランやレンタカー店舗は崩れたまま放置されており、瓦礫の山もところどころに見られました。ところが車で10分も走ると、街は普通で仙台市内はほとんど震災の影響は感じられませんでした。 テレビやラジオは東北の復興にがんばろうという声がしばしば聞かれ、人々は思いのほか元気そうに見えました。

 

 

 学会長の東北大学大内教授の基調講演では、検診先進地である宮城において高い検診受診率に伴い乳癌死亡率が減少に転じたことが誇らしげに語られました。 現在日本では世界に先駆けて超音波検診の臨床試験が進行中で、その結果さらに好成績が期待されます。最後にご家族、教室員が人的被害はまぬかれたものの被災されたにもかかわらず、本学会が実施できたことに涙ぐんでおられたのが印象的でした。

 

 昨年アメリカで40歳代の乳がん検診は、利よりも害のほうが大きいという発表がありました。それに対する日本での検討およびアメリカ、韓国から乳がん検診の実情報告がありました。 結論としては40歳代でも検診により乳癌死亡は減るという事実は確かだが、そのための弊害の解釈が違うことが浮き彫りになりました。第19回日本乳癌学会 日本ではアメリカで指摘されたほどの害は大きくなく、アメリカや韓国でもデメリットがあることを十分周知することができれば利益のほうが大きいことが確認されました。 乳癌領域における地域連携については、ほぼ全国的に体制は整い今後はより有効な実施が求められる段階であることが確認されました。よりスムースな病院と診療所との連携が求められます。 さらにより多くの病院、診療所が受け皿として機能するためにはどうすればいいのかといった方策が議論されました。

もうひとつ、乳腺を専門とする女医の処遇についてのセッションに注目しました。乳腺専門医は外科、放射線科、内科など様々なスペシャリティを基盤に成り立っています。女性医師が乳腺専門医を目指すとき、妊娠や出産によるキャリアの中断を埋めるための体制を整える必要があることが訴えられました。

 

 最後に学会のお楽しみ。今回これは無しのつもりでいましたが、仙台の人々の元気に逆に励まされ、新鮮なお魚、名物の牛タンそしておいしいずんだもちに舌鼓を打たせていただきました。まだまだ震災の爪あとは残っていますが、一日も早い復興を祈ります。

 

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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