最新の乳腺超音波診断装置を購入しました。 組織の硬さを測定できるエラストグラフィ(後述)も装備されています。
超音波診断装置とは人には聞こえない領域の音波を体内に発射してその反射を映像化する機械です。体の組織はその成分によって音の反射の程度が異なるため、体を開くことなく、その内容を目に見える形に表すことができるのです。
レントゲン装置も同様の機械ですが、レントゲンでは放射線を使うのに対して、超音波装置は音を使っているため安全です。妊婦さんのお腹の胎児を観察するのに使用されることからもその安全性はお分かりいただけると思います。
様々な機械と同様、この分野でもハードの進歩には目覚しいものがあります。
その基本はまず音の情報を画像に変換する際に色々加工する必要がありますが、それを最初の段階からデジタル化できたことです。そのほか様々の技術革新があり、画像が飛躍的に良くなりました。わずかな変化も鮮明に捉えることができるようになり、見落としが少なくなります。病変部の質的診断能力も向上しました。
何よりも大きな変化は、微小石灰化が描出可能になったことです。
今までマンモグラフィで発見される微小石灰化を超音波で確認することは困難でした。
そのため微小石灰化病変の診断をつけるためにはマンモトーム生検などの、特別な検査が必要とされました。それが最新の超音波装置を使うとリアルタイムに病変を確認できその場で病理検査も可能となります。これにより検診で発見される微小石灰化病変の診断が簡素化され、患者さんの負担が大きく軽減されます。
もう一つの画期的新技術はエラストグラフィです。
これは組織の硬さを描出する技術です。原理は超音波を観察しながら病変部に圧力をかけたときの、ひずみ方の違いによって硬さを測るというものです。
乳腺にしこりのできる病気は色々ありますが、その中でがんは一般的に他の病気に比べて硬い傾向があります。今まではしこりの形態的特徴のみに注目して、良悪の判定を行っていました。もちろんエラストグラフィだけで悪性の診断がつくわけではありませんが形だけではどうしても判断がつかないときに、ひとつの大きな診断材料となります。
具体的には比較的小さな病変に、形だけでは良悪の判定が難しい場合があります。それに硬さの情報が加わると、病理検査が必要か否かの判断が容易となります。それにより余計な検査を省略できる可能性があります。これによって患者さんの負担がさらに軽減されます。
最新の検査機器の導入によって見落としを防ぎ、できるだけ負担の少ない乳腺診療に取り組んでいきたいと思います。
著者 院長・医学博士 先田功
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