今年の4月から特定健診が始まります。
これは40歳以上の日本国民全員を対象とした健康診断です。皆さんご存知だったでしょうか。その内容は要するにメタボリックシンドロームの人あるいはその予備軍の人を見つけて、保健指導をしましょうということです。
そこで特定健診というよりもメタボ健診といったほうが分かりやすいかと思います。
実際の検査内容は腹囲(内臓脂肪)および脂質検査、血圧、糖検査です。
つまり脂質異常(以前は高脂血症と呼ばれていました)、高血圧、糖尿病の兆候をより早期に見つけて早めに手当てをしようということです。
脂質異常症、高血圧症、糖尿病という病名がついてしまうと治療が必要です。
そこにいたるまでに、そのリスクを見極めて保健指導をするわけです。
その根拠は、小太りで少し血圧が高く、血糖も少し高いといったいわゆるメタボな人はそのまま放っておくと動脈硬化が進んで将来脳卒中や心筋梗塞になる可能性が高いというデータです。上のメタボ3拍子がそろっていなくても、ひとつでも該当するものがあればやがて二つ、三つと危険因子が増していくものと考えられます。
保健指導の中心は運動指導と食事指導です。
適度な運動と正しい食習慣がメタボを予防し、これに禁煙を加えることにより動脈硬化から様々な病気になるのを防ぎます。
実はこの運動と食事の正しい習慣および禁煙はがんの予防と全く一致します。
日本人の3大死因はがん、心臓病、脳卒中ですから特定健診がうまく機能すれば日本人の更なる健康と長寿が実現できるというものです。
国としては、膨らむ医療費を何とかしたいということで打ち出された方針ですが、国民としては自分たちが健康で長生きするための制度であれば積極的に利用したいものです。
ただ、現場は混乱しています。
何せ今までに全く無い新しい概念で、非常に多くの人を相手にしなければなりません。
われわれ医療関係者もいったいどうなるのか予測が全くつきません。
社会健康保険加入者は従来の職場健診の延長線上で実施されるものと思われます。
その家族に関しては、各事業所の対応に任されています。
国民健康保険加入者に対しては、各市町村が健診の実施主体となります。
ただ現場はまだまだ準備不足で、おそらく4月からスタートできるところは少数だと思われます。まずは健診がスムースに行われるのか不安な面があります。
さらにその後の保健指導が滞りなく実施できるのか。
そして最終的にそれが本当に日本人の健康に寄与するのか疑問を呈する声もあります。
そうは言っても、すでにサイは投げられています。
制度にうまく乗っかって、この機会に自分の健康を見直してみることは悪くないことだと思います。
著者 院長・医学博士 先田功
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