論文捏造-院長のひとりごと

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論文捏造

 論文捏造 2014年9月号新書“論文捏造”は21世紀に入ってすぐ、アメリカの名門ベル研究所を舞台におきた空前の科学論文捏造事件を取材してNHK特集としてまとめたものを書籍化したものです。2006年初版ですが、今年日本で大注目のSTAP細胞事件と酷似しています。
電話を発明したグラハム、ベルの名が冠せられたベル研究所はアメリカが世界に誇る科学の殿堂で11名ものノーベル賞受賞者を輩出しています。日本の科学系ノーベル賞受賞者が9人だから、一つの研究所だけでそれを上回っているということになります。

 

 21世紀初頭、このベル研究所にドイツ出身の若き研究者が彗星のごとく登場し学会の注目を集めることになります。その舞台は超電導の世界です。
超電導とはある一定の条件下で電気抵抗が限りなくゼロに近づく現象で、それが実現されれば世界のエネルギー問題に大革命をおこすほどのインパクトを持っていました。
彼はこの分野で次々と画期的な研究成果をネイチャーやサイエンスなど超一流雑誌に発表し、一躍時代の寵児となります。結局これらすべてのデータは捏造であることが発覚しますが、それまでに数年の時間を要します。それ以前にそれら捏造をベル研究所が一流雑誌がそしてほかの科学者達がなぜ見抜けなかったのでしょうか?その根本には科学者に対する性善説があります。データをもとに公に発表する際、論理的につじつまが合っていればその結果をまず疑うという論文捏造 2014年9月号ことがありませんでした。さらにその研究をサポートしていたのがその分野の第一人者であり、何より名門ベル研究所がバックについていたため雑誌編集者も科学者たちもだまされてしまいました。その経緯はSTAP細胞問題でも同様で、発表したのは名もない若き研究者でしたが、研究サポート者としてその分野の世界的科学者が論文に名前を連ねており、何より理研がバックについていることが大きく影響しました。
本当にSTAP細胞があるならば、今後の再生医療に画期的進歩をもたらすという点で社会に対する大きなインパクトがありました。

 

 論文を捏造したところで人を傷つけたわけでも法律を犯したわけでもありません。しかしその不正により世界中の研究者が検証実験に無駄に多くの時間と労力とお金をかけたことへの罪は計り知れません。アメリカではベル事件をきっかけに科学論文の不正防止に多大の手立てが打たれるようになりました。日本はまだまだその分野で立ち後れの現状にあります。今回の事件を踏まえて制度を見直し、科学の世界で信用を取り戻すことが急務と考えられます。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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