SELECT-BC-院長のひとりごと

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SELECT-BC

 院長のひとりごと 2014年7月号 SELECT-BC

 日本人の日本人による日本人のための乳がん臨床試験でいい結果が出ました。それがSELECT-BCです。2006年から8年の歳月を要し、600人余りの患者さんが登録され、全国100施設以上が参加しました。その待ちに待った試験の結果がようやく出てきたのです。

 この試験の内容は転移再発乳がん患者さんに対して従来から認められている点滴によるタキサン系抗がん剤と日本で開発された経口抗がん剤であるTS1の効果を比較するというものです。

 

 まず治療効果に対しては生存率においてTS1のタキサン系抗がん剤に対する非劣性が証明されました。つまりTS1はタキサンと同等の治療効果があるといえるわけです。この試験が従来の臨床試験と大きく異なるのはこれから先です。

 副作用の内容と治療中の患者さんのQOL(生活の質)が詳細に検討されました。その結果、副作用の内容が両者で大きく異なり、TS1ではより軽微であることがしめされました。それによりTS1治療のほうがより高いQOLを維持しているものと考えられます。この点に関してはさらに詳細に解析がされている最中です。

 転移再発乳がんの治療は結構つらいものがあります。それでも治療のためには頑張らざるを得ません。そんな時には効果が同じであるなら副作用は軽いに越したことはありません。この試験結果は新しい治療選択の可能性を示したという大きな意義が認められます。

 

 院長のひとりごと 2014年7月号 SELECT-BCさらに一歩進んで、この試験結果は転移再発乳がん治療に一つの大きな変化をもたらす可能性があります。従来は乳がんの転移再発に対して直接命を脅かす状態でないときにはホルモン感受性があればホルモン剤を使うことが定石でした。最近の乳がん治療の進歩は様々なホルモン剤が開発されてきています。これ自体は治療の選択が広がるという意味で非常に有意義ではありますが、結構副作用に悩まされる場面にも遭遇します。こうした状況で従来のセオリーから逸脱して、TS1のような副作用の軽微な抗がん剤ならばホルモン治療の中で使用することも可能になってきます。

 この様な乳がん治療に大きなインパクトを与えるような臨床試験が日本から発信することができることに大いに感慨を覚えます。ここから出発した更なる派生的試験も現在進行中です。そのほかにも今後世界に向けた臨床試験が鋭意進められています。日本発にこだわる必要はもちろんありませんが、喜ばしいことには違いないと思います。

 

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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