遺伝性乳がん(ガイドライン改訂)-院長のひとりごと

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遺伝性乳がん(ガイドライン改訂)

 遺伝子 イメージイラスト遺伝性乳がんの原因遺伝子BRCA1を1994年に日本人が発見して今年で24年になります。この遺伝子に異常がある女性は生涯に乳がんになる確率が80-90%卵巣がんになる確率が40-50%と言われています。全乳がんの5-10%は遺伝性であるといわれています。

以前より乳腺専門医はこのことを知っていましたが、2013年に米国の人気女優、アンジェリーナ、ジョリーさんがこの遺伝子に異常があるということで予防的に正常の乳房を切除する手術を受けたことを公表し世間の認知度が一気に上がりました。

 

 今年(2018年)、乳癌学会の診療ガイドラインが3年ぶりに改訂されました。遺伝性乳がんの治療に対して一定の条件下で予防的乳房切除や卵巣切除が強く推奨されるように変更されました。

世界での臨床データの蓄積により、遺伝性乳がん患者に対する予防的乳房切除や卵巣切除に延命効果があることが証明されたからです。ただし日本ではこのような手術は先進医療機関でしか施行されておらず、もちろん保険適応でもありません。今年、遺伝子検査がようやく保険適応になったというのが現状です。

医学的に明らかに効果がある治療法に保険制度がついていかないということが時に起こります。乳腺専門医としては早急な対応を求めていきたいところです。

 

 遺伝子検査 イメージイラスト若年性乳がんやトリプルネガティブ乳がん、2個以上の原発乳がんや乳がんの発症があり血縁に若年性乳がんや卵巣がん、膵がんの人がいる場合遺伝性乳がんの可能性があります。該当する人は遺伝カウンセリング部門のある病院を受診し遺伝子検査を受ける事ができます。もし遺伝子に異常が見つかった場合はその後の治療や検査および血縁の方に同様の異常があるのかどうかにつきよく相談する必要があります。

 

 遺伝性乳がんと聞くと大変恐ろしいと思ってしまいます。しかしデータが蓄積され、適切な対処の仕方が明らかとなってきています。遺伝性乳がんに対して積極的に取り組み、乳がん死亡を減らすという目標に一歩でも近づけたらと思います。

 

著者 院長・医学博士 先田功(さきた いさお)

乳がん検診・乳腺外科
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