新しい乳がん免疫療法-院長のひとりごと

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新しい乳がん免疫療法

 最近、新しいがん免疫療法が脚光を浴びています。

アメリカの権威ある科学雑誌“サイエンス”は21世紀の医学で最も注目されるのは免疫療法であると予言しました。従来、様々ながん免疫療法がありましたが、科学的に有効と認められたものはほとんどありませんでした。ところが発想の転換と医学の進歩は全く新しいアプローチのがん免疫療法を実現しました。

 

 新しい乳がん免疫療法イメージ
そもそも免疫とは自己に対する非自己を認識し、排除するシステムです。

ヒトでいえば外界から入ってくるウィルスや細菌、有害物質を撃退するのが免疫です。

がん細胞はもともと自分の細胞です。それが遺伝子の変異によって自己に都合の悪い細胞になっているだけで基本的に自己細胞に酷似しています。それでもヒトの高度な免疫機構はその違いを認識できます。ただ異物のように簡単にはいかないためにいろいろと医学的手助けをしようとするのが免疫療法です。

従来はその免疫の力を強力にすることによってがん細胞をやっつけようとしていました。それがなかなかうまくいきませんでした。もともと免疫機構には促進的に働くグループと抑制的に働くグループがあり微妙な均衡を保っていることは知られていました。そこで発想を転換し、抑制グループの働きを抑えればがん免疫が促進されるだろうと考えられました。

さらに最新の分子生物学の進歩により、その抑制因子をブロックする薬が開発されました。

21世紀初頭に治験が行われたところ、予想以上の効果が認められ医学会は興奮に包まれました。

従来の抗がん剤が全く効かなかったがんが画期的に縮小、消滅する例が続発しました。アプローチの方法は様々あり、医薬品業界はこぞって開発に注力しています。

これらの薬は免疫チェックポイント阻害剤と総称され、すでにいくつかの薬剤は臨床応用されています。臨床治験段階の薬も続々と投入されています。

 

 すべての免疫チェックポイント阻害剤がすべてのがんに効くわけではありませんが、従来の方法で手の付けられなかったがんに新しく有効な武器が加わったことは間違いありません。

今後はどういうがんに効くのか、それとどんな副作用があるのかを見極める必要があります。また薬の値段が非常に高価なことも問題視されています。

まだまだ問題はあるもののまた一歩乳がんも含めたがん撲滅に一歩を踏み出したことは間違いありません。今後の行方を見守っていきたいものです。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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