乳がんと生殖医療-院長のひとりごと

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乳がんと生殖医療

 少子高齢化が叫ばれています。医療の進歩により平均寿命が延び人口の高齢化が進む一方で、晩婚などの生活習慣の変化に伴い出生数が減少しています。今や10組に1組のカップルは不妊と言われています。他方、最近の生殖医療の進歩は著しく新生児の25人に1人は人工授精によると言われています。

 

 乳がんは20代、30代の比較的若い女性もり患します。乳がんの治療は妊娠、出産の大きな障害となります。それでも子供がほしいと望まれる乳がん患者さんは以前から多く存在しました。乳がん患者さんにおいては治療が何より優先されることは間違いありません。がん治療か妊娠かの二者択一ではなく、両立させる時代を迎えつつあります。

 

 乳がん治療における手術、放射線治療、抗がん剤、ホルモン剤そして最近開発されつつある分子標的薬は時間的および質的に妊娠、出産の障害となります。特に抗がん剤とホルモン剤は卵巣への直接的影響が考えられます。標準的乳がん治療は年単位に及ぶため、若い乳がん患者さんも高齢化し自然妊娠がむつかしくなります。

 

 そこで最近の生殖医療の進歩は様々な方法を提起します。すでにパートナーのいる患者さんの場合は受精卵の凍結が一番確実となります。まだパートナーのいない患者さんには卵子の凍結が可能です。さらに最近は卵巣の凍結が可能となってきました。乳がんの治療が一段落してから人工授精、妊娠が可能となります。

 

 それを可能にするためには医師と患者さんとの情報の共有が大切です。医師は乳がん治療を担当する乳腺専門医と生殖を担当する産婦人科医との連携が必要です。乳がん治療と生殖医療それぞれに精通した看護師や心のケアを担当するカウンセラーの役割も重要です。

 

 これからは若い女性に乳がんが診断された場合、治療法の相談に加えて生殖医療についての正しい情報を提供し、適切な対応がとられることが大事になります。そのために乳がんと生殖医療に関する情報が広く共有されることが必要になります。国はこの現状を踏まえ研究班を立ち上げ、「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」を作成しました。さらに研究班は患者さん向けに「乳がん治療にあたり将来の出産をご希望の患者さんへ」という手引き書も作成しました。乳がんと妊娠、出産を巡る問題は昔からなかなか解決困難でしたが、生殖医療の進歩が大きな光明となりつつあります。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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