遺伝性乳がん アンジェリーナ・ジョリー(アンジー)さんの場合-院長のひとりごと

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遺伝性乳がん アンジェリーナ・ジョリー(アンジー)さんの場合

 アンジーさんは生まれつき、BRCA1という遺伝子に異常があることが分かりました。この遺伝子に異常があると生涯80%以上の確率で乳がんになります。そこで彼女は、まだ病に侵されていない正常の乳房を両方とも切除しました。さらにこの遺伝子に異常があると、卵巣がんの確率も高くなります。そのためアンジーさんは正常の卵巣も摘出することにしました。皆さんならどうしますか?遺伝性乳がん(アンジェリーナ、ジョリー(アンジー)さんの場合)

 

 このような遺伝性乳がんは乳がん全体の5%くらいといわれています。それほど多いわけではありませんが、血縁の方に乳がんが多くしかも比較的若い年齢で発症しているとか両側乳がんや卵巣がんを併発しているとその危険性が高まります。その場合遺伝子検査をすれば、BRCA遺伝子に異常があるかどうかを調べられます。ただしリスクがあるからといってすぐに検査をするべきではありません。なぜなら、遺伝子に異常がなければ問題はありませんが、異常が認められたときにどうするかという事を事前に十分考えておく必要があるからです。異常があった場合、アンジーさんのように予防的に手術を受けますか?さらに異常が見つかった場合、問題はその人個人にとどまらなくなります。つまりその血縁の人全員に遺伝子異常の可能性が出てくるのです。特に大きな問題となるのは子供さんがいる場合です(将来子供をもうける予定があるときも同様です)。遺伝子異常があると2分の1の確率でその異常は子供に引き継がれます。子供さんも遺伝子検査をしますか?もし遺伝子異常を子供が引き継いでいたらどうしますか?その事実を伝えますか?何歳になったらその事実を受け入れることができるでしょうか?問題は非常に複雑です。そのような恐れがある場合は必ず専門のカウンセリングを受けましょう。

 

 アンジーさんのニュースは非常に衝撃的ではありましたが、当院の日常臨床にはそれほど影響はないものと思っていました。ところが血縁の方に乳がんのある人がたくさん受診をされました。血縁に乳がんの方がおられる人は確かに乳がんのリスクは高まりますが、たいていは生活習慣の問題で遺伝性乳がんはまれです。それでも多くの人が乳がんに関心を持っていただければ、それはそれで喜ばしいことだと思います。遺伝性であれ、体質性であれ今のところ乳がんの発症を予防する良い方法はありません。定期的に検診を受けることの重要性を改めて強調したいと思います。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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