冬の寒い時期には胸が痛むという訴えでクリニックにみえる方が増えます。
乳腺の手術をした患者さんも、寒くなると傷やその周辺が痛むと心配されます。
乳がんは痛くない場合が多いです。
したがって痛いから心配ということはあまりありません。
もちろん痛い乳がんもありますから、痛いから大丈夫というわけでもありませんが。
今年の冬から春先にかけては気候と天気が非常に不安定だったため、そういう訴えの患者さんが多かったように思います。
真冬の本当に寒い時期は、皆さんそれに充分備えておられるのでそれほどでもありません。 最近のように暖かくなったと思ったら、急に気温が下がったようなときが要注意です。
それで夏の暑い時期も、エアコンなどで冷えると同様の現象が起きます。
とにかく冷えないように心がけることが大事でしょう。
これから暖かくなると、乳腺炎の患者さんが増えます。 梅雨時のじめじめした気候も要注意です。
それと乳腺炎で特徴的なのは、赤ちゃんが8ヶ月から10ヶ月くらいのお母さんに発症することが多いことです。
この時期離乳食が進みどうしてもお乳を飲む量が減ります。 そうするとどうしても乳腺内に乳汁がうっ滞して、乳腺炎を起こしやすくなります。
授乳をやめる時期も問題になります。
赤ちゃんは食事で充分栄養を摂れるようになっても、いつまでもお乳を欲しがるものです。
それをいつまでも続けていると乳腺炎の危険性が高くなります。 母子のスキンシップは非常に大事ですが、やめ時が問題です。
春と秋の4月と10月は健康診断の時期です。それでそれに引き続く時期は、検診で異常を指摘された患者さんが多くクリニックを訪れます。乳がん検診の場合1000人が受診すると、その5%である50人くらいが要精密検査となります。
そのうち乳がんが見つかるのは2人だけです。
したがって要精密検査といわれても50人中48人は何でもありませんからそれほど心配することもありません。
昨年度は乳がん検診無料クーポン券が配られたため、年度末の2月3月は検診受診者が非常に多くなりました。 受診者がそれだけ増えると、要精密検査の人もたくさん指摘されました。 クリニックでも2月3月は戦場のような忙しさとなりましたが、4月に入ってもその余韻がしばらく続きました。 多くの患者さんは乳がんではないため、ほっとして帰られます。
結果が出るまでの不安な気持ちを考えると、検診も罪作りです。 しかしこの検診のおかげで多くの乳がん患者さんが見つかりました。
おそらく無料クーポンがなければ発見はさらに遅れた可能性があります。
それを思うと、やはり検診の重要性を再認識しました。
今年度も無料クーポン券が配られることが決まりました。まだ集計はできていませんが、昨年度の受診者は目標よりかなり下回ったものでした。
昨年度の教訓を生かして、更なる検診受診率の向上を目指したいものです。
著者 院長・医学博士 先田功
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