今年の乳癌学会総会は7月3日(金)4日(土)に東京のお台場で開催されました。
レインボーブリッジから東京タワーが見え、フジテレビ本社がすぐ近くにあり実物大ガンダムができた話題のスポットでの開催でした。
テーマはHumanity
Based Medicine:人間性豊かな医療の実践ということでした。
東京ということで5000人以上の参加者があったとのことです。実際どの会場も人人人であふれていました。
こんなに多くの人が乳腺診療にかかわっているのかと思うと感無量でした。
今回注目のセッションは、病院と診療所との連携およびチーム医療を取り上げたシンポジウムでした。
日本の乳がん患者数の増加に伴い、病院の乳腺科はキャパシティーオーバーの状況に陥っています。
一方で全国的に乳腺専門のクリニックが多く立ち上がってきています。
これらの病院と診療所とが有機的につながり、チーム医療の役割分担を達成することが求められています。
このような必要性は乳腺疾患に限ったことではありませんが、この領域で今一番進んでいるように思われます。
それだけに他領域の見本となるべく、今後の努力が必要となります。
病院およびクリニックから先進的取り組みについて、様々な発表が行われました。
参考にすべき点を取り入れ、明日からの診療に役立てたいと思いました。
いまひとつ注目したテーマは、これからの乳腺診療を考えるということで、諸外国と日本との比較および外科、腫瘍内科、放射線科など様々の領域からの提言がありました。
乳腺診療については、アメリカやヨーロッパのほうが進んでいるという認識があります。
確かにそうである面がある一方で、各国様々な問題も抱えています。
まだまだ改善の余地がある日本の乳腺診療ですが、良いところは積極的に取り入れるもののむしろ日本のほうが優れている面も多々あり、それらは損なわない努力も必要であることが確認されました。
また現在日本の乳腺診療は外科が中心となっていますが、腫瘍内科や放射線科その他の関連科との連携は必須です。
診療科の垣根をできるだけ取り払い、スムースに役割分担を行うことでもっと効率的に診療が行えるのではないかという議論が展開されました。
最後に日本における乳がん検診について、日本乳癌検診学会の理事長が特別講演を行いました。欧米の乳がん検診が、乳がん死を減らすということが分かっているにもかかわらず遅々として進まない日本の乳がん検診の実情が語られました。
そんな中、各方面の努力によりここ数年で国や自治体、医療関係者そして国民の意識は確実に高まりつつあります。
口は出すが、金を出さない国もついに補正予算で乳がん検診無料クーポン券を出すことになりました。
これを何とか成功させ、一気に日本の乳がん検診の気運を盛り上げたいものです。
毎年、乳癌学会総会に参加すると非常に大きな刺激を受けます。
診療を休んで多くの患者さんにご迷惑をおかけしますが、ここで得たものをできるだけ多く患者さんに還元することがそれに報いることと信じて明日からの診療に取り組みたいと思います。
著者 院長・医学博士 先田功
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