抗がん剤の値段-院長のひとりごとコラム

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抗がん剤の値段

 乳がんには抗がん剤がよく効きます。
そこで乳がんの患者さんに対して、術後療法や再発治療、さらに最近では術前療法として広く抗がん剤が使われています。
また新しい抗がん剤がどんどん開発され、一般臨床に使われるようになりました。
さらに有望な抗がん剤も目白押しです。
これらは非常に良いことなのですが、ひとつ問題なのはその値段です。
つまりどの薬も非常に高価であるということです。
日本では公的医療保険が整備されていますから、多くの患者さんは実際の3割の自己負担で治療を受けています。それでも1回の治療に数万円が必要です。高額医療費の補助制度や医療費の税金控除はあるものの、相当な負担であることに違いはありません。
それでも命には代えられないと苦労をしておられることと思います。 抗がん剤の値段 

 当院でも多くの患者さんに抗がん剤を使用しています。
実は抗がん剤治療は病医院にはほとんど利益になりません
患者さんからお預かりしたお金は、病医院をほぼ素通りして製薬会社へ回ってしまいます。
私も病院勤めのときはそれほど感じてはいませんでした。
ところが開業して計算をしていますと、どうもおかしいということに気がつきました。
日本では保険診療の際に、薬の値段は国が定めています。さらに製薬会社の売値についても、厳しく規制されています。
つまり病医院が薬の差額で利益が出ないように統制されているのです。
私も開業したときに、薬価と薬の納入価格の表を見せられその差額の少ないことに驚きました。さらに驚くべきことは、病医院では患者さんから消費税はいただきませんが、薬を買うときには消費税を払わなければなりません。
抗がん剤の中には、特別なフィルターを備えた高価なチューブを使わないといけないものもあります。また在庫管理や期限切れ、誤注入などで薬を没にせざるを得ない場合もあります。
そうすると、下手をすると損が出てしまう場合すらあります。

 ずいぶん泣き言を並べてしまいました。
乳腺専門医にとって、抗がん剤は治療の大きな柱のひとつです。
リスクも大きいですが、腕の見せ所といっても過言ではありません。
日々抗がん剤治療を行っていますが、経済的には決して恵まれていないことは患者さんと同じであることをご理解いただけるとありがたいです。

 

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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