乳がんの手術について-院長のひとりごとコラム

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乳がんの手術について

 乳がんに対する手術術式最近大きく変わってきています。
 
乳がんの手術について古くは古代中国や、メソポタミア文明で乳がんの手術をしたのではないかという資料が残っています。
乳がんは体の外から見える場所にあるので、昔からそれを何とか取り除こうと努力がなされたのでしょう。

 日本では華岡青洲が全身麻酔下に初めて手術を行ったのは、乳癌の手術です。医学史的に初めての乳がんに対する根治手術はハルステッドの手術ということになっています(年代的には華岡青洲の手術のほうが古い)。
このハルステッド手術は、定型的乳房切除術という名前で100年近く乳がんに対する標準術式として世界中で行われてきました。
これは乳がんを含む乳房全体とその下の大小胸筋さらに腋窩(わきの下)リンパ節を根こそぎとってしまうという術式です。
1970年代
になって、胸筋を残す縮小した術式が開発される一方、鎖骨や胸骨の周囲リンパ節から場合によっては胸壁までも合併切除する拡大乳房切除術といった術式も行われるようになりました。この両者の術式はいずれもハルステッド術と同等の成績であることが証明され、乳がん手術は縮小の方向に進むようになりました。
1980年代には乳房を切除しない乳房温存術式が開発され、今では小さな乳がんに対する標準術式になっています(今でも大きな乳がんに対しては乳房切除術が必要です。)。
さらに1990年代にはセンチネルリンパ節生検手術が開発され、腋窩リンパ節を大部分温存することができるようになってきました(リンパ節転移がある場合はやはり切除の必要があります。)。

 そして究極の乳がん治療法として、手術をしない方式が開発されつつあります
ひとつは集束超音波治療という方法です。 これは読んで字のごとく、超音波を乳がんに集束させてがん細胞を死滅させようというものです。
問題点は装置が非常に大掛かりであることです。
もうひとつの方法はラジオ波を使って、やはりがん細胞を死滅させる方法です。
こちらはすでに肝臓がんなどにも使われており、機械もそれほど大掛かりではありません。
いずれもまだ研究段階ですが、近い将来標準の治療法となる可能性は高いと思われます。
但し、どちらの治療法も適応は小さな乳がんに限られます。
さらに忘れてならないのは、日本発の手術法である内視鏡手術です。これは縮小手術というわけではありませんが、手術の傷が小さく目立たないということが特徴です。
この術式はすでに健康保険でも認められています

 乳がんの手術はあくまでも治療が目的です。治療成績が同じなら縮小手術のほうにメリットがあるのは当然です。そのためには乳がんを早期に見つけることが大事です。早期発見、早期治療は治療成績を上げるだけでなく、負担の少ない治療を受けるためにも必須のことといえます。

著者 院長・医学博士 先田功

乳がん検診・乳腺外科
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